2008年05月09日

非保護者:椎崎夕



※盛大に、ネタバレしてます。

<あらすじ>
麻倉征、19歳、大学生。彼には8歳年上の同居人がいる。ひとり暮らしをする征に父親が寄越したお目付役・瀬尾篤史だ。
幼い頃から傍で自分を見守ってくれていた瀬尾と数年ぶりに一緒に暮らすことになった征だったが、瀬尾に対してどうしても素直な態度を取れない。
かつて征にとって誰よりも大切な存在だった瀬尾。だが、ある時を境にふたりの関係は大きく変わってしまっていたのだ・・・
会社員×大学生モノ。

保護者にあらず、って保護者以外の人全部だなー。
ということで、自分的にはものすごくインパクトのあるタイトルでした。



あらすじ読んだとき、正直買うかどうか悩みました。
・・・なんとなく想像つくじゃないですか、展開(笑)
でも、北畠さんのイラストだし、個人的に作家買いリストに入ってる椎崎夕さんだし、ということで買ったんですが・・・よかったです。
椎崎さんって、やっぱり切なさをうまく書かれる方ですよね。
しかも、その切なさ加減が、いちいち私のツボをピンポイントで押さえてくるんですよ。
あのかなわない想い抱えて、大好きな人を見てるしか出来ない、っていうあの気持ち。
片思い中、相手の一挙手一投足に、喜んだり泣いたりした経験のある人は、結構ハマる感じじゃないかな〜と思いますよ。
・・・まあ、そうは言っても私も若かりし頃の話ですけどね(笑)
なにをどうやったらこうもふてぶてしくなれるのか・・・。
征も、もうちょっとふてぶてしい子だったら、こんなに辛い気持ちばっかり抱えなくてよかっただろうにね・・・。

一流のピアニストとなるべく育てられた征は、あるときの事故で、その将来をなくしてしまう。
ピアノ以外の道を知らなくて、しかもピアノができない自分を母親に完全に否定されしまう。
そんな征の側にいたのが、遊び相手としていてくれた瀬尾。
ずっと側にいてくれたのに、あるときそれは事故の負い目からだと知り、征は瀬尾を遠ざけてしまう。
そして、大学生となり、どこまでも無気力に過ごす征に困り果てた父親が、お目付け役として瀬尾を征の元によこす。
それから、同居生活を始めることになる・・・。

征は瀬尾が恋愛対象として好きなんですけど、それを自覚してるだけに、瀬尾から逃れようとするんですよね。
自分の気持ちを悟られたくないっていう気持ちが働いて、気が合うわけでもない仲間と楽しくもない夜遊びに繰り出す毎日。
それを、瀬尾が迎えにくるというパターン。
でも、これって、結局かまってほしいという感情のような気もするんですよね。
そもそも両親からそんなに愛情受けて育ってるという感じではない征は、やっぱりどこかだれかに甘えたいって気持ちがある様に思うんですよ。
しかも、瀬尾は「仕事」という名目で必ず捜し出して、迎えに来る。
聞き入れてくれるわけではないけど、ワガママを口に出すことを許すんですよね(だからと言って意見が通った試しはないけど/笑)
どことなく瀬尾も、甘やかしてる気がしなくもないですよね。
それもそのはず、瀬尾も征のことを、ずっとずっと好きでいたから。
その昔、征との関係が決定的にこじれる原因となった、「そばにいるのは怪我に対する負い目」という征の思い込みを否定しなかったのは、征と離れたかったから。
これ以上側にいれば、なにもせずにいることが難しいと、自分でわかっちゃったから。
そこが、二人の年齢を感じますね。
ただ好きだからそばにいたい、という気持ちと、好きだからこそそばにいたら手を出してしまいそうだ、という気持ち、どっちもわかりますけど、そこが子供と大人の差かなあと。
その後、偶然とはいえ、奇妙な再会を果たすことになるのだけど、二人とも自分の気持ちを隠すことに必死。
ただそこにやっぱり年齢差は如実に現れるもので、征はいつまでたってもうまくごまかせなくて逃げてばかりで、瀬尾は仕事という顔をすることでうまく隠せる術を身に付けてるんですよね。
でも、ほかの男に襲われて逆上した瀬尾が、征を思わず襲ってしまうシーンは、「なぜそこで瀬尾の気持ちに気付かないんだ、征!」とツッコミまくり・・・。
いくらなんでもそんな理由で、上司の息子に手を出したりしませんよ、サラリーマンは(笑)
それがもとで、征は瀬尾に嫌われた、と真剣に思い込むんですが、彼はそこから瀬尾を手放すことを真剣に考えはじめるんです。
結局のところ、どんな理由でも自分のそばにいてくれる存在に安心して、それが当たり前の状態に。
でも、瀬尾にも、瀬尾の人生があるのだからと、思うようになります。
そして、好きだからこそ、報われない恋を続けることに限界を感じはじめ、離れなきゃいけないと。
だから、まず瀬尾がいなくてもなんでもできるようにと、いままで全部まかせっきりだった生活全般のあれこれを自分でするように、そしてただなんとなく生きてた人生について考え直し、自分のしたいことはなんなのかと真剣考えるのです。
そうして、征はすべてを自分で決めるんです。
もう、瀬尾のことはいらないと、言って彼の元を去ろうとします。
この征の成長ぶりは目を見張るものがありますが、最初はホントにただただ切なくて胸が痛くて、何度も泣きそうになりながら読みました。(・・・椎崎さんにはよく泣かされます)
だからこそ、この結末がうれしくて。
でも19歳でそこまでされちゃうと、大人の瀬尾の不甲斐なさにちょっと怒りたくもなったりしましたね(笑)

タイトルですけど、征にしてみれば、自分は瀬尾に保護されるような子供じゃない、という成長の物語でもあったし、瀬尾にしてもれば、征のことを保護者のように見守るのはもうやめた、な話ですよね、多分。
最初は、不思議なタイトルだなーと思ってましたが、読み終わるとなんとなく納得。
posted by 棗 at 20:13| Comment(0) | TrackBack(0) | BL(小説)>椎崎夕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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