2005年10月27日

上海金魚:かわい有美子


<あらすじ>
水端佑季の恋は、上海で終った。
愛人関係にあった伊藤には、妻も子もあった。
いつか別れる、そんなありきたりの言葉を信じきっていたわけでも、彼の狡さに気付いてないわけでもなかった。
けれど、突然もたらされた伊藤との別れに、佑季は深く傷ついてしまう。
しかし、異国の地で出会った滝乃の優しさに触れ、心惹かれてしまう佑季。
つかの間の恋だと知りながらも、二人はある夜、身体を重ねてしまう・・・。
会社員×公務員モノ。


初の、かわい”有美子”さんです。
「いのせんと・わーるど」のイメージが強くて、硬質な作品を書く方なんだと思い込んでいましたが、実はこういう雰囲気のものも書かれるんですね。
水の中を漂ってるような、ふわふわとしたような感じとでも言えばいいのか・・・。
久しぶりに、ツボにハマる作品でした。
そして何よりも、いまだかつてこんなにも萌えたえっちシーンがあっただろうか、いやない(笑)





自分なりに大ざっぱにBLをジャンルわけすると、官能(笑)、職業、救済、そして恋愛かなと。
そして、この作品はまさに恋愛小説。
取り立てて大きな事件が起こるわけでも、めくるめくえっち(笑)がくりかえされるわけでもなく、主人公の佑季のひとつの恋が終わり、また新たな恋に身を投じていく様が、ゆっくりと、そして静かに書かれてます。
しかし、かわいさんの作品は、「いのせんと・わーるど」と、この「上海金魚」しかまだ読んでいないので、完全に言い切ることが出来ないんですか、ちょっと冷めた視点で読めるんですよね。
例えば、以前書いた高遠琉加さんの「好きで好きで好きで」だったりすると、主人公に感情移入しすぎて、読んでる自分が呼吸困難に陥りそうなほど苦しくなってしまうんですが、かわいさんの作品だと、どこか一歩引いてるような感覚があって、主人公に感情移入し過ぎることなく、まわりに漂う空気までも堪能できました。
上海という街に行ったことはまだないので、どんな雰囲気なのかは全く想像がつかないんですが、日本の倍くらいの長さで時間が流れていそうな感じです。
それでも、限られた時間しかなかった二人には、短すぎるものだったんだろうな・・・。

タイトルにもあるように、舞台は上海。
まじめで目立たない地方公務員の佑季は、伊藤に誘われるまま、上海にやってくる。
初めての海外に戸惑う一方で、仕事を休んでまで伊藤との逢瀬のためにこんなところまでやってきてしまったという罪悪感を感じてしまう。
けれど、そんな佑季の後悔すら、伊藤にはわからない。
そんな些細な意識のズレは、ずっと二人の間には起こっていた。
妻も子もあり、そして地位も金も持っている伊藤の、恋人ではなく愛人でしかない佑季。
同等の立場の恋人でありたと願う佑季に対して、どこかかわいらしいペットを連れて歩く感覚に似ている伊藤の態度。
本気だ、妻とは別れる、君だけだ、そんな言葉をくり返す伊藤の態度は、言葉を裏切るようなものばかり。
自分だけを見ていて欲しいくせに、自分はなにも手放さない。
そんな彼の狡さに、佑季はずっと気付いてたはず。
だからこそ、伊藤のそばにいて、笑うことも心地いいと感じることもなかった。
結局、伊藤に別れを切り出し、上海にひとり残った佑季は、伊藤の仕事の関係者である滝乃をガイド役として紹介されることになる。
今まで感じたことないような居心地のよさ。
魔法のような言葉だったり、優しさだったり、気遣いだったり、ほんの些細なことが、佑季の心にはしみわたってしまう。
日本に帰るまでのほんの数日。
好きになってはいけない人だと、頭ではわかってはいるのに、心と身体が求めてしまう。
そして、帰国の前日、どちらからともなく二人は身体を重ねる。
限られた時間しかない旅先での出来事だからこそ、帰国後もずっとそのことが忘れられなくなってしまう。
見知らぬ土地での心細さと解放感という、旅にはつきものの気持ち。
それが見せる夢のような時間は、いつまでも抜け出すことが出来ず、日本で日常に戻ったとしても、しばらくはどこか浮いてるような感じが抜けない。
そんなどこまでも浮遊感漂う作品でした。



この記事へのコメント
かわい有美子さん、好きなんです。

と、のっけから宣言してみました。硝子@(やっぱり)これもまた愛しき日々です。
ハードなもの、というか、充実した作品を書かれる方のように私は感じているのですが、是非、これを機にファンに!(笑

BL作家ランキングベスト5に入るくらい好き…というわりには実は読了作品は少ないんですよ、実は。積むだけ積んで手元に12冊ほどあるんですが、好きなあまり読むのに身構えちゃって読めないんです…。
かわいさんの作品の何が好きって、安易な背景描写じゃないところですかねー。
どこがこう、とは言いませんが、例えば簡単に生まれや育ちに理屈付けしてそれっきりじゃないような、奥行きのある部分が好きなのです。舞台についても同じくで、物凄く雰囲気がある。屋台骨ともいえる本筋ではない部分なわけだから、手を抜こうと思えば抜けるだろうに、と思うとなんとなく嬉しくなるんです。


高遠さんの『好きで好きで好きで』も丁度手元にあるんですが、私の場合高遠作品のほうが入れ込めないんじゃないかと思います。が、その前に一つ。高遠さんのは一人称で書かれていて、かわいさんのは三人称で書かれているのでその違いもあるかと…。
それと、高遠さんの方が「好き」という感情を前に出して主人公が動いているような気がします。対するかわいさんの方が相対的には惑いや恐れを強く書かれているような。直接的か、間接的か、ということかもしれませんが、個人的には高遠さんの方が炎だとするとかわいさんのは熾火のようだと思うのです。

>浮遊感
同意致します。かわい有美子さんの書かれる恋愛にはなんというか、ぽーっと熱に浮かされるようになってる間に絡め取られてしまって動けなくなるような恍惚感を感じるんで。

…というのはまぁおいときまして。
覚悟を決めて私も読もうかと思います…。積んでいても誰も読んでくれませんしね。
Posted by 硝子 at 2005年10月28日 00:37
硝子さん、こんばんは、コメントありがとうございました。
すみません、すっかりお返事遅くなってしまいました・・・。

そうですよ〜、積読本はもったいないですよ!
覚悟決めてみませんか?(笑)

「上海金魚」のおかげで、かわいさんのますますファンになってしまいました。
<スキャンダル>シリーズだけと言わず、他の作品にもどんどん手を出していこうかなと(笑)
でも、私の場合かわいさんのどこが好きときかれてもうまく説明できないんですよね。
ただ、「上海金魚」に限って言えば、作品のまとってる空気が好き、なんだと思います。
他の作品も読むと、もっと違うイメージもわくかなと、結構楽しみでもあったりします。

>高遠さんの方が炎だとするとかわいさんのは熾火のようだと思うのです。
すばらしい例えに激しく同意です。そうですね、そんな感じです。
でも、どっちのタイプも、私は好きなんですよ(笑)
気が多いというか、節操がないというか・・・。

それでは、硝子さんの「上海金魚」の感想を期待してます!
Posted by 棗 at 2005年10月30日 20:55
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