2020年08月17日

夏の離宮 叛獄の王子外伝:C・S・パキャット




宮殿の庭園をふたりが歩いて行く。ここはイオスの「夏の離宮」。デイメンの母が庭園を設計し、19歳のデイメンがかつて狩りに熱中した思い出の離宮。運命を決したキングスミートでの裁判、カストールとの最後の戦いの後負ったデイメンの傷もようやく癒えてきた。アキエロスの政情はまだ不安定で、ローレントの即位もこれからだ。忙しい日々を送る王と王子は、ここでならゆっくりと二人だけの時間を作ることができる。ローレントは戸惑いながらもいつもより素直な表情をデイメンに見せるー。「叛獄の王子」エピローグとなる表題作ほか3作を収録した、「叛獄の王子」外伝。


そんなレアな人はきっといないと思うけど、この番外編読んでから本編読んだら、多分驚くと思う。








買ってから寝かせすぎ感がいなめないのは、ちょうど原書読み終わってすぐくらいだったのもあったし、どうしても自分的に読むのが辛い1作があったから。
なんていうか、もう執政にありとあらゆる呪いの言葉をあびせたい。
本編で語られたストーリーのその裏に隠された物語もまた真実ではあるのだけど、どこまでも残酷だ。
執政自身、己のしてきたことの大きさは気付いていたのか、と。
ただあの人ならああして放り出された人が癒えない傷を作ることすら快感であったのだろうとしか思えない。
そんな彼とわずかながらでも時間を共有してしまったアイメリックと、そのアイメリックとかかわったジョードの2人の関係、「春の青さはうたかたの」は美しいタイトルではあるけれど、その名の通りはかない物語だった。

だからこそ、その後のチャールズの存在は私の心のよりどころだった。
あの陰謀渦巻く宮廷で、高度な頭脳戦を戦い抜いたローレントですら頼りにする男、布商人チャールズ。
あんな駆け引きや計算ずく、といったものから無縁の真っ当で正直な人は、この作品の中にはいないよね…。
だからこそのあのオチなんだけど。
そんなチャールズが大好きだ。

「色子語り」のアンケルの計算高さは、個人的にはローレントと仲良くなれそうな感じがしたな。(とはいえ、ローレントの方が一枚も二枚も上手ではあるんだろうけど)
裸一貫で成り上がる彼もまた冷酷であるかにみえて、やはり人の子。
立身出世以上に大事なものは別にあったわけだし。
ペリドットを捨てるでもなくしまい込んでしまうような彼は、やっぱりどこか情のある人間なんだろうなとふと思った。

実を言えば「夏の離宮」は一番最後に読んだ作品。
締めは甘いほうがいいなあと。
あの憎しみ合っていた日々が嘘のような今、ただ未来を思えば楽観はできないのかもしれない2人が、ちょっとだけ喧騒を離れて二人きり(でもないけど)で過ごす様子は、ただただ甘い。
あの緊張感みなぎる2人の距離、嘘に嘘をかさねるばかりで一向に本当のことが見えてて来ない、そんな日々が終わったことに、驚きつつもやっぱりうれしい。
あんな殺伐とした時間を過ごした2人がこんなふうになるなんて、誰が予想した?きっと作者様だけだろうな…。


posted by 棗 at 19:26| Comment(0) | 翻訳BL>C・S・パキャット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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