2007年04月02日

あなたの声を聴きたい:椎崎夕



<あらすじ>
祖母を亡くし、一人暮らしをする大学生の中里亨。
ある日、宅配のアルバイト中に配送先の家から悲鳴が聞こえ、駆けつけたところ、その家の主、春梅が倒れていた。
そこへ帰宅した春梅の孫、早見貴之が帰宅し、強盗の嫌疑をかけられてしまう。
すぐに、疑いは晴れたものの、宅配のバイトはクビに。
そんな亨のもとに、偶然貴之が現れ、なぜか春梅の見舞いにいくことになってしまう。
亡くなった祖母を思い出される春梅と会うことが楽しくなり、春梅の家に頻繁に出入りするようになる、亨。
そのうちに、最悪の印象だった貴之を見る目もかわり…。
会社員×大学生モノ。


オトナ×コドモが読みたい!
切ない受けちゃんが読みたい!
という、欲望に忠実なチョイス(笑)
でも、想像以上の切なさに、のたうちまわりました…。
初の椎崎さんでしたが、この方は基本こんな感じなんでしょうか?
なんてたって、ルチルであの厚さで、しかもあとがきすらないという…。
うーん、これは大ヒットでした。
あはは、切なくて泣いてしまいましたよ…。





運が悪いという言葉で片づけたくたくはないけれど、亨は本当にかわいそうな子。
バイト中悲鳴に驚き駆けつけてみれば、強盗に間違えられそのバイトはクビ。
もっとも、そこで亨が駆けつけたからこそ、春梅も無事だったのだから善意の行動のはずなのに。
亨は、人と深くかかわることをしない人。
ある特定の特徴をもった大人の男がどうしてもダメで、そんなタイプの人を目の前にするととたんに動きが止まってしまう。
そして、自分の気持ちを誰かに伝えるということができないというか、その行為をあきらめている。
そんな彼の性格も手伝って、第一印象はあまりよろしくなくあまり人に好かれるような子ではない。
中学校に入ってからすぐに、シングルマザーだった母親にできた新しい恋人。
彼と3人いっしょに暮らすようになって、夜仕事にでかける母親の目を盗んで義父から仕掛けられる性的な悪戯。
それが怖くて、仕事中の母親の元に裸足で逃げだした亨。
でもその行為は亨から仕掛けられたもので、誘われたのは自分だという義父の言葉を母親は信じてしまう。
そんな亨を黙って迎え入れてくれたのが祖母で、そんな祖母との二人暮らしで一見平穏に暮らしつつも、心の中に残った傷は消えないでいた。
それ以来、その義父に似たタイプの人が怖くて、人に触られることが嫌いで、誰かに自分の気持ちを伝えることをあきらめてしまった。

そんな亨、ちょっとしたおばーちゃんコンプレクスというか、どうしても妙齢の女性には弱く酷い目に遭ったというのに、春梅の怪我を気にしたりなにかと世話を焼いたり構ってもらえることをうれしく思ったり。
そうやって春梅の元を訪れるうちに、彼女の孫の貴之とも口をきくことが多くなってしまう。
亨からしてみれば貴之はまさにニガテのタイプそのままで、どうしても彼と顔を合わせると身構えてしまい憎まれ口をたたくことしかできない。
そんな時義父が突然亨の前に現れ、それを偶然居合わせた貴之が助けてくれたことから、亨の気持ちに変化が表れる。
どうしても貴之の声や背格好に義父に似たところを見いだしていたはずなのに、まるで違うことを知る。
しかしその後亨は貴之が自分を避けていることに気付いてしまう。
そのことが、どうしてこんなにも辛くて苦しいのか意味もわからないまま。
それが、義父との言いあいの中で過去の出来事をばらされてしまったことで、自分を変に思ってるのだと誤解した亨は、貴之の側からはなれることを選ぶ。
そしてようやく、自分がこんなににも貴之に惹かれていたことを自覚する。

貴之自身ゲイで、そこことで実家の母親とも不仲になってしまっている。
自分自身、世間の風当たりがきついことも自覚してる。
そんな時目の前に亨が現れる。
全くもって自分のタイプからは外れてる。
でも、気がつけば自分の中でしっかり気持ちは亨に向いていて。
でも未成年で自分の祖母の友人でトラウマ抱えてて、そんな亨に手を出せないと貴之自身も身を引こうとする。
そんな時、亨の過去を知り、亨が義父のことを当然のように悪く言う様を見て、ますますダメだと思ってしまう。
その時亨は、がんばって自分の気持ち伝えようとしたのに。
そのことがきっかけで、もう会えないことをはっきりと悟った亨のところへ、諸悪の根源の義父が転がり込んでくる。
彼から逃げだしたくて、とっさにアパートから飛び出す。
母親の携帯電話に連絡をするものの、その番号は使われていない。
そして、無意識にその足は、春梅家に向かっていた。
けれど、春梅も貴之も不在の家に、向田だけがいる。
当然のように。
そして、二度と来るなと告げられる。
それだけ、貴之を傷つけたことを知り、あらためて愕然とする亨。
そしてもう、元には戻れないことをあらためて知る。

亨が居場所をなくしてしまったシーン、どうしようもなく胸が痛くて、ここは本気で泣きました・・・。
事情を知らない向山があんな酷いこと言うのも、わからなくもないけど、それでもあそこはいたたまれなくて。
どうしてこの子ばかりというくらい、不幸な事件や事故の連続ささいな思い違いや言葉の足りなさ、本当にちょっとしたことなのに。
…これで、ハッピーエンドでなければ、私は本を投げつけていたに違いない(笑)

それにしてももうちっとがんばれなかったのかなあ、貴之…。
亨がけなげなぶん、やはりしっかりしてない攻に、即ツッコミ!
たしかに、あなたは忍耐の人だけど(笑)
posted by 棗 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | BL(小説)>椎崎夕 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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