2013年05月14日

ファンタスマゴリアの夜:砂原糖子

4344827538ファンタスマゴリアの夜 (幻冬舎ルチル文庫)
砂原 糖子 梨 とりこ
幻冬舎 2013-04-16

by G-Tools

父の跡を継ぎ、貸金業を営む束井艶は、同窓会で幼馴染みの永見嘉博と再会する。小二の頃、人気子役だった束井はある事故をきっかけに仕事を失い、なぜか似合わないワンピースを着た永見と出会った。学校でも浮いた存在の二人は友達に。小五のとき、永見に突然告白されて振ってしまった束井だが、中学、高校と成長するにつれ惹かれていき…。



かわいい話が続いた後は、ぐっとシリアスな作品で。
しかし、私はいまだに砂原さんの持ち球がわからない…。





実はあらすじ読んだだけでは全く内容が想像できなくて、???な状態で読みはじめたんですが、非常に引き込まれました。
ファンタスマゴリア自体意味がわからなくて、走馬灯かあ、そうなのかあという具合で。
その走馬灯も、死の直前に見るモノとしての認識しかないという…。
モノを知らないなあ私…。がっかりだよ。

読んでいて思ったのは、いつものBL読んでる感じではないなあと…。
もちろんふたりの間に恋愛感情はあるし、身体の関係も当然あって、必要なものはそろってるはずなのに、なぜかそんな風に強く感じてしまった。
止まってしまった束井艶の人生のやり直しの物語のように思えたからなのかな。
ぐるっとまわって、最初から。
今度こそそこに自分の感情をうまく乗せて、身体だけじゃなくて、止まったままの心が今度こそ動き出せるはず。
子役という時代を経て、今度は貸金業者。
大人に囲まれ、子どもらしさをおき忘れた子ども時代と、自分の気持ちをうまく偽ることで、壊れないでいる今。
その束井の感情を揺り動かすことの唯一できるのが、同級生の永見嘉博。
彼といるときだけは、年相応に戻れる。
束井は表情も乏しく、感情をあらわにしない。
だからと言って、何も感じないわけじゃない。
表現する術をなくしただけで、人と同じく傷つくことも喜ぶことも普通にある。
その一方で、永見に抱く感情が何なのか、わからずにいる。
読んでて感じたのは、束井ってどこか子どもみたいな人だなと。
よくわからない衝動に突き動かされて、突然永見に会いに行ったり、ほかのだれかとべたべたしてたら無意識ににらんでたり。
そして、死の間際に見えるのは、昔永見が自分を好きだと言った思い出だと思ったり。
好きって自覚できなくても、執着心だけは持ってるから。

束井と永見の再会、そして束井の同業者、子役時代の因縁の相手…。
いろんな役者が揃い、この物語を形作っているんですけど、どのピースが欠けてもこうはならない。
非常に、読みごたえるのある作品で、大満足でした。
posted by 棗 at 16:58| Comment(0) | TrackBack(0) | BL(小説)>砂原糖子 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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