2012年03月05日

優しくて切ない:名倉和希


<あらすじ>
御曹司でありながら平凡さゆえに親から期待されず疎まれている智樹は、同期入社の省吾に一目惚れし、付き合うことに。幸せな時間を過ごしていたが、省吾が女性と浮気をしているという噂を耳にする。確かめてみれば、あっさり認められた。どうしても別れたくない智樹は、浮気の一切から目を瞑り、「お前が一番だ」という言葉を信じて付き合い続ける。しかし省吾に転勤の辞令が下り、遠距離恋愛という不安定な状態の中、智樹にも見合い話が持ち上がり…。


攻の省吾があらすじ通りの男でしたが、他所様のブログで感想読んだりして心構えができてたから少しは冷静に読めたかなと。
でも、こいつは最低だと思う。




省吾は自分がどんなに浮気を繰り返しても、智樹だけは許してくれる。
遊びだから、本気じゃないから、一番好きなのは智樹だからと言って、智樹の怒りをごまかしてしまう。
一方の智樹も、最後に省吾が戻ってくる場所は自分のところだからと、すべてに目をつぶって許してしまう。
当然そんな関係が長く続くわけもなく、省吾の転勤に伴う遠距離恋愛となったところから少しずつ変化し始めます。
そもそも智樹も、なぜこんな男とこんな恋愛を?と思ってしまうんですよね。
彼はその境遇にもあるように、創始者一家の御曹司でありながら、落ちこぼれの烙印お押された存在で、会社の中でも家でも自分の存在意義を見いだせないような状態。
そんな智樹の前に現れた省吾は、自分とは正反対の出世街道を進むできる男。
眩しい存在の省吾に憧れていたら、その気持ちをすぐに悟られ、付き合うことになってしまったのです。
好きな人と付き合うということで、本当に嬉しかったんだなって、付き合いはじめの智樹の喜びは読んでて伝わってくるんですよね。
でも、そこから苦しい恋愛の始まりでもあったんですよね。
遊びを言い訳に、言い寄ってくる女を拒みもせず、浮気を繰り返す省吾。
当然智樹は怒りますし、傷つきます。
でも、一番好きなのは智樹だと言われれば、許すしかできないのです。
許さないで省吾を失うことのほうが耐えられないから。
…それを付き合ってるといえる状態なのかどうか、それは本人たちにしかわからないのでしょうけど、対等な関係ではないですよね。
そうなってくると、智樹の精神的な負担も半端なものではないのは当然で。
しかも、省吾の浮気相手ともう1年以上続いてることを知り、もう我慢することにも許すことにも疲れてくる。
会社での自分の立場も微妙。
いろんなことが重なって、智樹は省吾との関係を終わらせることを考えはじめる。
一方の、省吾は、智樹の心が離れつつあることにすぐには気づけない…。
なにしても、今までも許してくれたんだから、今度も、そう甘く考えてるところがある。
バカじゃないかと思う。
その根拠の無い自信は一体どこから…。
それくらいの自信がないと、浮気しながら、智樹を縛り付けるなんてことできないんですが。
でも、智樹にたいして違和感を感じるようにはなるんですよ。
いつもと何かが違うって。
省吾は、自分のことしか考えてない人間ですよね。
つきあう相手は、自分に都合のいい人間だから付き合ってる、好きだとかいっしょにいたいからとか、そういうのとは違う。
ようするに、付き合ってると言いつつも、相手の存在に興味なんてないですから。
彼にとって大事なのは、自分。
智樹や浮気相手の考えてること思ってること、そういうことはどうでもいいんですよ。
自分がその瞬間、どう感じてるか、が一番大事。
だから、智樹の心変わりに気づけないし、それがなぜだかわからない。
ある種不幸ではありますけど、自業自得以外のなにものでもありませんが…。
その省吾が、離れていく智樹に対して、はじめて慌てます。
自分以外のものに目が向いたのって、その時が初めてですよね、多分。
こうして、省吾と智樹、気持ちのベクトルが入れ替わります。
読んでる側には、智樹と省吾の視点が切り替わりながら読むので、彼らひとりひとりの気持ちの移り変わりを見ていられるんだけど、実際リアルの恋愛であれば、相手の心の中なんて見えないわけです。
今の言葉が本当の気持ちなのか、口先だけのものなのか。
とくに省吾は今までの実績が実績なだけに、信用なんて言葉皆無です。
だからこそ、この二人が最終的な決着つけるのにどうするのか、そこがすごく気になるお話でした。

今回は、省吾のキャラにむかつくだろうなあと思って、なるべく感情移入しすぎないよう心がけて、客観的に読むようにしたのもあって、特に登場人物の視点が切り替わりながら話が進む小説の楽しさを堪能したように思います。
…でも、省吾は最後の最後まで嫌いでしたよ。
浮気するのに言い訳する男は大嫌いだけど、当然みたいにする男も大嫌いなので。
posted by 棗 at 17:40| Comment(0) | TrackBack(0) | BL(小説)>名倉和希 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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