2009年11月02日

はつ恋:榎田尤利



<あらすじ>
事故が原因で2度目の高校生活を送る久我山。大人びて冷めた瞳の久我山に、担任の曽根は親身になってくれる。うっとうしい教師だったはずの曽根を知るにつれ、その甘い声をもっと聞きたくなってしまう久我山。胸が痛むほどのこの想いに名前があるとすれば―恋。しかし曽根には恋人がいるうえ、自分はただの生徒にすぎないと知り…。それでも彼を守りたい。未来を変えるために、今、恋をする。


今回は、がっつりネタバレの方向で…。
なので、未読の方は要注意です!




31歳の久我山は、ある事故をきっかけに17歳の自分に戻ってしまう。
それは、31歳の自分自身がそこにあるわけではなく、17歳の自分を器にして中身だけが31歳の自分。
そうやって、17歳という時期をもう一度やり直すことに。
それにしても、14年。
めまぐるしく世界は動いてるんですね。
自分の14年前を想像して、確かに携帯電話もなければ、インターネットもなかった。
多分まだ、パソコンじゃなくてワープロ使ってた。
当時はそれが当たり前だったから不便さは感じなかったけど、今の自分が戻ったら多分堪えられないなあ・・・。

久我山も、ただ時間を逆戻りしたのであれば、あの頃と同じような生活をなぞっただけかもしれないんですよね。
とはいえ、未来を知るものが過去に現れれば、多少の影響があるかもしれないけれど・・・。
ただそこは作中ではなかったので、どうなるかは全く想像のしようがないんだけど。
でも、このお話のようなことには…ならないだろうね、きっと。
今回、久我山の時間を逆戻りしてしまう事故のきっかけとなるのが、「高校時代の先生の葬儀の帰り道」だったわけなんですよ。
高校時代、自分のことでいっぱいいっぱいで、あらゆることが面倒くさくてうっとうしいと感じてた、そんな頃で、その亡くなった教師というのも自分の中で記憶の欠片もないような存在で。
友人に誘われていやいや出ただけ、そんな状態で。
そんな興味のない存在だった彼、曽根を少しずつ思い出した矢先に、事故にあってしまう。
そして、高校時代へ逆戻り・・・。
当然、その頃とは久我山も曽根を見る目が違いますよね。
眼中に入ってなかった存在が、まず「14年後に自殺してしまう人」という気持ちで見てしまう。
そしてなにより17歳の目線と、31歳の目線は、もう全然ですよね。
どんなに自分自身が変わってないと思っていても、やはり人間環境が変わり年もとれば、否応無しにかわっていくもので、ましてや余裕のない17歳の久我山と、デキル男の代表のような31歳の久我山では大きく違って当たり前。
教師であり当時オトナだと認識していた年上の存在を、今度は大人の目線でじっくり見てしまうのです。
あの頃、どうしようもなく面倒くさい相手だと思ってた曽根が、実は一番自分たち生徒のことを考えてくれていた存在なんだってことを。
そんな曽根を、久我山は救いたいと思うようになるんですが、その方法を見つけられない。
でも、自分がこの時間にとどまっていられるのはあとわずかな時間しかないことに気付く。
その短い時間に、久我山は曽根に恋をしてしまうんですよね。
その様子がちょっとかわいすぎるんですよね。
まさに”はつ恋”。
家族環境もあるだろうけど、久我山ってそういう情での関係って信じてないですよね。
男女のつき合いすら、ビジネスライクにかまえてるとこあるし。
完全に、恋愛に不向きなタイプの人・・・。
そんな31歳の久我山の初恋の相手は、24歳の曽根。
これって、年上を好きになってる感覚なのか年下の人を好きになってる感覚なのか。
それとも、同じ社会人として、大人の恋?
でも、あの恋の自覚の仕方はやっぱり高校生の甘酸っぱい恋の記憶に重なる部分があるなあ・・・。
状況的には、確実に年上攻めなんだけど、なんか年下攻めにしか読めない気がする。
完璧な男も、初恋の前にただのコドモに成り下がってるよ。
でも、その初恋は成就することなく、未来起こるであろう最悪の結末を回避する術をなんら施すこともできないまま、17歳の器に入ってた31歳の久我山は消えてしまいます。
24歳の曽根の前から。
でも結果として、直接的ではないんですが、久我山の存在は曽根の未来に大きく影響してしまうんですよね。
あのわずかな時間、曽根のなかに久我山という存在が強く残ってしまったから、だからこそ生まれた未来ですよね。
作中に出てきた映画は、「ターミネーター2」ですよね、多分。
今ちょうどドラマ版のほうを見ていて、タイムリーだなと思ったんですよ・・・。
あれは、何度となく未来を変えようとしてるけど、でも、どうしても変わらない。
ドラマの方も、未来を変えると動き出したがために、同じ未来をなぞるハメになりそうな予感・・・。
だから、このお話読みはじめて真っ先に思ったことは、変わらない未来でした。
正直言って読み進めるのが怖かったです。
でもなんだろうな、久我山の一生懸命さに引っ張られてた気がするな、読んでる時。
だから、なんとかなるかも?って希望があって、読み終えた感じ。
きちんと、ラブな終わりでよかった。
でも、久我山にはわずかな時間だったけれど、曽根には随分長い14年間だったんだろうな・・・。
だからたった半年お預けさせられただけで限界点突破なんて、久我山はもうちょっと待てができたほうがいいと思うよ(笑)
posted by 棗 at 21:00| Comment(2) | TrackBack(0) | BL(小説)>榎田尤利 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私も読みました。
17歳の久我山が消えるところや意識を取り戻したところでうるうるしてました(最近、BLで泣いてしまう・・作者さんの思う壺な素直な私)
変えられない未来・・・変わって良かった(単純)

ラーメン屋の一件から急に久我山に冷たくあしらわれた曽根さん・・・考えるとなんだか気の毒でした(観点がずれてるのかなぁ・・私)
Posted by 瑠璃 at 2009年11月03日 21:51
瑠璃さん、こんばんは♪

私も最近BL読んでて泣くこと多いんですよ。
しかも榎田さんはすごく涙腺刺激されます。
読んでて、気持ちが入りやすいのかなあと思ってるんですが、どうなんでしょうか…。

>ラーメン屋の一件から急に久我山に冷たくあしらわれた曽根さん・・・考えるとなんだか気の毒でした

私も、あれはかわいそうで…。
だって、フォローされるの14年後ですよね?
物分かりのいいオトナで、しかも先生だったから、淋しいと思いつつ、割り切ってたんでしょうけど、ちょっと、かわいそうすぎますよね。
だから、ラストが甘くてすごくよかったですね〜♪

コメントありがとうございました。

Posted by 棗 at 2009年11月04日 21:13
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック